重行の家
種別/リノベーション
所在地/和歌山県紀の川市
構造/木造平屋建て
延床面積/174.31㎡
竣工年/2022年
Photo/Koki Matsumoto
火のある暮らしを楽しむ家
庭を介して山並みを望む、平成初期に建築された和風住宅。
現況は55坪弱と広々とした住まいではあるが、壁で区切られた個室優先の間取りで、周辺に目を向けると開けた敷地ではあるが住まい単体として閉じた印象がありました。
そのため、改修では住まい全体を機能的に美しく使え、かつ、周辺環境をいかに住まいへ導くかを意識し再編集を行っています。
そこで、眺望の良い南面に集いの場となるLDKを設け、窓際のインナーテラスが屋外テラス、庭、そして山並みへと繫がる構成としました。又、インナーテラス中央に大型薪ストーブを配置し、火を眺めながら大開口の先に龍門山の山並みを朝日と共に望みます。
加えて、LDKに隣接する和室を設け、こちらからも借景できるよう雪見障子を移設。
日常的な座敷としてや、客間としてもゆったり過ごせる場となっています。
各個室へは回遊性のある動線とし、その中に家事室、パントリー、納戸、ライブラリースペースを設け、単なる廊下とならない工夫を凝らしています。又、その際に設けた新たな壁が、耐力壁として耐震等級3を満たす構造補強へと繫がり、機能的にも構造的にもバランスを取るよう配慮しました。
敷地に隣接する菜園スペースで自家製野菜や果物をつくり、薪ストーブで調理をして、美しい景色を眺めながら舌鼓。
そんな、自然と共にある暮らしを、周辺環境と共に紡ぎだした計画です。
立派な松の門被りが門扉廻りを彩る。
アプローチを抜け玄関へ。屋外テラスと一体となったポーチが出迎える。
庭の外構は施主様自ら施工予定。
広々とした玄関。状態の良かった靴箱、敷台、ブラケット照明は磨きをかけ再利用している。
向かって左へ進むとリビング、右へ進むとプライベートスペースに続く。
靴箱横にはゆったりとした収納を設け、引違い戸それぞれで、ご夫婦の使い分けができるようにしている。
天井のパネリングは無垢のサーモアスペン貼り、動線に沿ってLDKへと続く。
LDKへ。インナーテラスから屋外テラス、庭、そして龍門山の山並みへと続く。
ダイナミックな梁組み。2間と縁側を繋げる際、干渉する柱は撤去し柱と合成梁で補強している。
正面壁は手で揉むことにより生まれた皺の表情、色の濃淡が印象的な和紙貼り。
冬の日差しは室内まで届き、タイルを温め輻射熱でじんわり温まる。
加えて、チークの無垢フローリングには床暖房を施し大空間でも冷えを感じない。
リビングに隣接する和室は雪見障子を移設。
壁の左官塗替えを行い明るい印象へ。
和室からリビングへ進む。
南面の大きな開口部は荷重等に配慮し、電動シャッターを採用している。
大型薪ストーブは住まい全体を温めることができるほどの燃焼効率を持つため、室内建具は可能な限り引き戸としている。
対面式カウンターのあるゆったりとしたキッチン。
キッチンからの眺めも楽しめるよう、コンロ前には壁を立てずに納めている。
向かって左側の建具を空けると、リビング用(来客用)トイレを設けている。
キッチン横を抜けると、パントリー、家事スペース、本棚、その先に奥様の寝室と機能的な動線が続く。
個室を抜け廊下に出る。正面の窪みはお手持ちの本棚が収まるライブラリースペース。
新たに設けた壁の多くが耐力壁として機能している。
リビングのトイレとは別にご夫婦それぞれの個室や浴室と近接する位置に、広めのトイレを設けている。
室内は行き止まりの無い動線が続き、南側個室からはそのまま屋外テラスを通りリビングへアクセスできる。
屋外テラスから庭を見る。
薪ストーブの煙突は壁出しとし、煙突下部に点検口を設け掃除のしやすさに配慮されている。
BEFORE