海南の古民家
種別/リノベーション
所在地/和歌山県海南市
構造/木造2階建
延床面積/275.94㎡
竣工年/2023年
Photo/Koki Matsumoto
記憶を継承する集いの場
ゆったりとした敷地に4棟が建ち並び、家族がそれぞれに程良い距離感を持って暮らしている中で、普段はほとんど使われていなかった今回部分改修を行った古民家に、快適に皆が集える場を設ける計画です。
建物は一般的な田の字型平面ですが、南側の仏間を含むハレの間については手を加えないことを前提とする中で、北側において広さとともに採光をどのように確保するかがポイントとなりました。
又、建物には玄関タイルや欄間障子、建具類に良質な装飾意匠が施されており、それら既存要素と調和を図りながら上記課題を解決できないかと考えました。
そこで、耐震補強壁、補強梁、下屋に設けたトップライト、新たに設けた建具に大小さまざまな“機能を兼ね備えた格子”を採用しました。それらが快適性につながると共に住まい全体に溶け込むことで、今回手を加えなった良質な個所についても、改めて価値が見いだされるのではと考えました。
部分改修によって全体の価値を再確認することを暗に意図した計画です。
虫籠窓が印象的な外観。必要な補修工事のみ行いました。
玄関ホール。床板を杉板に張り替え、向かって右側にシューズクロークを新たに設けています。
向かって左側は手を加えてない南側の和室二間。雪見障子の上には特徴的な装飾欄間。
玄関タイルにもさりげない文様。
今回の工事で壁の左官は、明るい色に塗り替えている。
新たに設けた建具を介してリビングへ続く。
トップライトからの光が建具を通して廊下を照らします。
赤身杉を用いた建具は建具屋さん拘りの一品。
廊下と2間を繫げたリビングスペース。下屋部分にトップライトを設けることで劇的に明るくなりました。
目隠しを兼ねた格子耐力壁、小屋裏床の補強を兼ねた格天井、連続するトップライトが印象的なスペース。
田の字の北側の和室についても、雪見障子を介して繋がります。
広々とした小屋裏は床板の張替えのみ行いましたが、ゲストルームにも使えそうなスペースとなりました。
既存建具の明かり窓。
手の込んだ作りが随所にある。
BEFORE