冬野の古民家
種別/リノベーション
所在地/和歌山県和歌山市
構造/木造平屋建
延床面積/158.83㎡+LOFT 20.58㎡
竣工年/2021年
Photo/Koki Matsumoto
“時を経た陰影”を愛しむ住まい
現況は度重なる増改築によって、4棟と増築下屋が複雑に絡み合いながら水回りからの白アリ被害と戦っている、そんな極めて複雑な状況でした。
まずは建物の状態や床面積の必要性を勘案し、水回りのある出下屋と、敢えて一番新しい布基礎のある建物の解体を行いました。というのは、布基礎の建物は腐食した土台と基礎が緊結され、補強のためには建物を一旦持ち上げる必要があり、実は古民家の方が部材の差し替えが容易だという特徴を活かし、そちらを念頭にプランを進めました。
そして、厚化粧を取り除くことで現れた純粋な古民家の躯体を最大限活かすべく、限界耐力計算に基づく耐震改修を施すことで、小屋裏も含めた立体的な間取り構成となりました。
結果、グレイッシュなイメージを当初よりお持ちのご夫妻と、古民家の構造や周辺環境とが重なり、光の陰影が印象的な住まいとなりました。
外壁は黒の焼杉板で統一。
複雑な建物形状を感じさせないシンプルなイメージとしている。
土台の腐食が激しかった玄関付近も、腕利きの大工さんによって再生されました。
玄関ホールはロフトに通じる開放的な吹抜け空間。
炭入りモルタルの土間、構造材に合わせて選定した濃色のフローリングが、自然光をより印象的なものにしている。
田の字型の和室4間があったスペースを間仕切りのないLDK+畳コーナーとした。
キッチン前の収納は造作。モラートという左官材にて、モルタル色に仕上げている。
キッチンから庭方向を望む。
リビング上の引込み障子でロフトと繋がる。
中央の格子壁は耐震補強壁の役割を持つ。
小物のディスプレースペースとしても活用できる。
ロフト下部の空間は元々梁下が1725mm、天井面で2000mm弱と低かったため、床下に点検スペースを確保しながら建物の床全体に下げることで室内の高さを確保している。
併せて、棟のつなぎ部分にあった床段差を全て解消している。
洗面脱衣室には玄関及びダイニングからアクセス可能。
洗面台はグレーの人造大理石仕上げ。
勝手口引き戸の先には物干しスペースを備えている。
ロフトへの階段は玄関正面に位置するため、シンプルで軽やかな印象の力桁階段とした。
ちょっとした収納にも使えるロフトスペース。
ロフトの引き込み障子戸を開け、LDKを望む。
ロフトから玄関ホールを見下ろす。
視線の高さが変わることで室内の印象も変化する。
玄関ホールから東側へはトイレ、そして個室方向へ繋がる。
各個室は杉床とし、黒板クロスをアクセントとした明るいスペース。
リビングの木部塗装、そして壁の左官はほぼ施主様によるDIYにて仕上げている。
BEFORE